『アメリカン・グラフィティ（American Graffiti）』1962年の夏、あなたはどこにいましたか？

公開日：2023/01/22

1971年に映画『 THX 1138 』という作品で監督デビューしたジョージ・ルーカス（George Lucas）でしたが25世紀という遠い未来を想定したSF作品であり興行的にはヒットしませんでした。そこで自身で設立したルーカス・フィルムにおける第1作目の作品には未来ではなく過去を描くことにしました。それが1973年の映画『アメリカン・グラフィティ（American Graffiti）』です。

映画『アメリカン・グラフィティ』予告編 Trailer 1973.

ジョージ・ルーカスの故郷であるカリフォルニア州モデストを舞台にした作品ですが、撮影に入る前に現地を訪れると過去の面影は薄れていて、実際のロケ地はペタルマという場所になりました。ジョージ・ルーカス自身が持っていたレコードの音楽から過去へのイメージを広げていく手法で脚色されていき、最初にピック・アップされた音源は75曲だったそうです。実際に映画で使用された音源は41曲です。

映画『アメリカン・グラフィティ』 opning credits Theme Music 1973. Rock Around the Clock

タイトル・バックで使われた曲は1954年に発売されたRock Around the Clock で歌っているのはビル・ヘンリーとザ・コメッツ（Bill Haley and his Comets）です。作詞、作曲はジェイムズ・E・マイヤーズ（James E.Myers）とマックス・C・フリードマン（Max C. Freedman）です。

映画『アメリカン・グラフィティ』悲しき街角 1973.

悲しき街角の正式タイトルは Runaway で作詞、作曲、歌、デル・シャノン（Del Shannon）です。映画『アメリカン・グラフィティ』の出演者はリチャード・ドレイファス（Richard Dreyfuss）、ロン・ハワード（Ron Howard）、ポール・ル・マット（Paul Le Mat）、チャールズ・マーティン・スミス（Charles Martin Smith）のほか、若き日のハリソン・フォード（Harrison Ford）が最後の場面に出演しています。

リチャード・ドレイファスは1975年の映画『ジョーズ（Jaws）』に若い海洋学者の役で出演した人物といえばお判りになるでしょう。

映画『ジョーズ』予告編 Trailer 1975.

この映画『アメリカン・グラフィティ』のGraffiti は直訳すれば「落書き」になります。映画のタイトルを決めたのも監督であるジョージ・ルーカス（George Lucas）ですが、映画製作に資金提供したユニバーサルとは相当もめたようです。ユニバーサルが提供した金額は77万7千ドルに対して、興行収入は1億5千万ドルと予想外の大ヒット作になりましたし、のちに製作される映画『スター・ウォーズ（Star Wars）』というSFオペラの誕生にも繋がりました。

映画『スター・ウォーズ』予告編 Trailer 1977.

映画『アメリカン・グラフィティ』で使用された曲目はロックンロールだけにとどまらず、ドゥー・ワップ（Doo-wop）へと進化していったリズム＆ブルースも取り入れています。1962年という年はアメリカではボブ・ディラン（Bob Dylan）がニューヨークにやってきた年であり、イギリスではビートルズ（The Beatles）がデビューした年にあたります。音楽が革新的に変化した時代だったと言えるでしょう。

映画『アメリカン・グラフィティ』サーフィン・サファリ 1973.

映画『アメリカン・グラフィティ』オール・サマー・ロング 1973.

1961年に結成されたザ・ビーチ・ボーイズ（The Beach Boys）の曲も挿入歌として聴くことができます。このサイトではサーフィン・サファリ（Surfin’ Safari）とオール・サマー・ロング（All Summer Long）をリンクしました。

映画『アメリカン・グラフィティ』のヒットの大きな要因は若き日のフランシス・コッポラ（Francis Ford Coppola）をプロデューサーに迎え入れられた事にあります。コッポラの名が映画製作スタッフに記載された事で製作費も上乗せされました。のちにアメリカ映画の中心人物になっていく2人の巨匠がタッグを組んだ作品になった事はヒット作になりえた大きな要因だったと思えます。

映画『アメリカン・グラフィティ』 Little Darling by The Diamonds 1960.