『スパルタカス（Spartacus）』エリア・カザンとの出会いから映画音楽家となったアレックス・ノース

公開日：2020/04/24

ハワード・ファスト（Howard Melvin Fast）が書いた原作の映画化である。　史実的には「スパルタクスの反乱」といい、紀元前73年から紀元前71年にかけて起きた共和政ローマ帝国期の奴隷による反乱を描いた小説です。

映画『スパルタカス』予告編 Trailer 1960.

1960年公開のアメリカ映画で主演のカーク・ダグラス（Kirk Douglas）が製作・総指揮をおこないました。監督はスタンリー・キューブリック（Stanley Kubrick）ですが、自身の作品として認める事は最期までありませんでした。　音楽を担当したのはアレックス・ノース（Alex North）です。

映画『スパルタカス』 original sound track 1960.

アレックス・ノースの本名はイサドア・ソイファ（Isadore Soifer）といい、1949年アーサー・ミラー（Arthur Asher Miller）脚本、エリア・カザン（Elia Kazan）演出の「セールスマンの死（Death of a Salesman）」という舞台における音楽を担当したことから本格的な映画音楽家への道が拓けました。

映画『セールスマンの死』 original sound track 1951.

1951年にこの「セールスマンの死」が映画化されたときにもアレックス・ノースが作曲したスコアーがそのまま使用され、さらには同年のエリア・カザン監督作品である映画『欲望という名の電車（A Streetcar Named Desire）』の音楽も担当しました。

映画『欲望という名の電車』 original sound track 1951.

1955年には映画『アンチェイド（Unchained）』の主題曲「アンチェイド・メロディ（Unchained Melody）」を作曲しています。のちに映画『ゴースト/ニューヨークの幻（Ghost）』の主題歌となった曲です。

映画『アンチェイド』 original sound track 1955.

1961年にはクラーク・ゲーブル（Clark Gable）、マリリン・モンロー（Marilyn Monroe）ともに最後の主演作品となる映画『荒馬と女（The Misfits）』の音楽を担当しました。

映画『荒馬と女（The Misfits）』 original sound track 1961.

クラーク・ゲーブルはこの時、すでに59歳でしたが撮影に際してスタントマンの起用を断り、荒馬との格闘シーンを演じきっています。クランク・アップ直後に心臓発作に倒れました。

1963年にはエリザベス・テイラー（Dame Elizabeth Rosemond Taylor）主演の超大作映画『クレオパトラ（Cleopatra）』の音楽を担当し、1966年には映画『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない（Who’s Afraid of Virginia Woolf ?）』を作曲しました。

映画『クレオパトラ』 original sound track 1963.

映画『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』 original sound track 1966.

映画音楽家としてアレックス・ノースはアカデミー賞に15回もノミネートされましたが最優秀受賞はありません。1991年9月、享年80歳で亡くなっています。1990年に公開された映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ（Dances with Wolves）』が、もし同じ年に公開されていなければ『ゴースト/ニューヨークの幻』で使われたライチャス・ブラザーズ（The Righteous Brothers）盤の「アンチェインド」がアカデミー最優秀歌曲賞を受賞していたでしょう。

映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』 original sound track 1990.