『黒いオルフェ(Black Orpheus / Orfeu Negro)』マルセル・カミュー監督がこだわりを貫いたギリシャ神話
映画『黒いオルフェ(Black Orpheus / Orfeu Negro)』は1959年のフランス・ブラジル・イタリア3か国による合作作品になっていますが、監督であるマルセル・カミュー(Marcel Camus)がフランスの映画監督であること、さらにこの作品は当初、オール・ブラック・キャストによる舞台劇であったことから全編をブラジルで撮影された異例のフランス映画だと言えるでしょう。
映画 『 黒いオルフェ 』 予告編 Trailer 1959.
フランス語版とポルトガル語版の2つがあり製作時にはポルトガル語で製作されています。出演者の殆どをロケ地ブラジルで探していて主演のブレノ・メロ(Breno Mello)はサッカー選手で俳優経験はありません。美しい娘、ユーリディスを演じたマルペッサ・ドーン(Marpessa Dawn)も一般人です。
映画 『 黒いオルフェ 』 Manhã de Carnaval Original source
音楽を担当したのはアントニオ・カルロス・ジョッビン(Antônio Carlos Brasileiro de Almeida Jobim )で別名、トム・ジョビン(Tom Jobim)も同じ作曲家です。20世紀のブラジルを代表する作曲家でボサノヴァ(Bossa Nova)という音楽ジャンルを作り上げた第1人者です。
映画 『 黒いオルフェ 』Samba de Orfeu original source 1959.
映画のラスト・シーンで子供たちが丘の上から朝日に向かって歌う「オルフェのサンバ(Samba de Orfeu)」はルイズ・ボンファ(Luiz Bonfa)が作曲しています。
この映画『黒いオルフェ』はヴィニシウス・ヂ・モライス(Marcus Vinícius de Cruz e Mello Moraes) が1956年に発表した戯曲「オルフェウ・ダ・コンセイサウン」を映画化したもので、さきに記述したとおり元々はマルセル・カミュー演出の舞台劇でした。これを舞台同様オール・ブラック・キャストで製作し、撮影もすべてブラジルでおこない現地で録音まで完成させるというこだわりを貫いた映画です。
マルセル・カミューが語った制作にあたっての言葉
「リオの貧しい人々は街を見下ろす丘の上に閉じこもって、富が持ち込む文明を拒絶していた。私はこの映画の主人公をこの丘の人々にしようと決めた。迫害を受けた苦しみと悲しさをリオのカーニバルで晴らしきる。この人たちの思いをオルフェに重ね合わせたとき芸術的なる興奮に震えた。」
マルセル・カミューは44歳のときにはじめて映画監督になったため作品数は少なく1967年の映画『 ふたりだけの夜明け(Vivre la nuit)』も彼の作品になります。
映画 『 ふたりだけの夜明け 』 original sound track 1967.
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