『黒水仙（Black Narcissus）』英国の薔薇、されどオスカーの偉大なる敗者 Deborah Karr

公開日：2020/09/21

映画『黒水仙（Black Narcissus）』は1947年のイギリス作品になります。主演女優のデボラ・カー（Deborah Kerr）はこの作品により注目されアメリカ・ハリウッドへと招かれアカデミー賞に6回ノミネートされましたが最優秀主演女優のオスカーを獲得することなく2007年10月16日パーキンソン病によって亡くなりました。

映画『黒水仙（Black Narcissus）』予告編 Trailer 1947.

監督はマイケル・パウエル（Michael Latham Powell）とエメリック・プレスバーガー（Emeric Pressburger）の共作になります。マイケル・パウエル監督が1939年に製作した映画『スパイ（The Spy in Black）』製作時にエメリック・プレスバーガーを紹介され脚本を任せています。のちに「アチャーズ・プロ（The Archers）」という映画製作会社を2人で立ち上げました。

映画『スパイ（The Spy in Black）』1939.

アチャーズ・プロの第1回製作映画は『わが一機未帰還（One of Our Aircraft is Missing）』という作品で、アメリカ・アカデミー賞において脚本賞にノミネートされています。またデンマークが主催しているBodil Awards最優秀ヨーロッパ映画賞受賞作品になります。

映画『わが一機未帰還』 1942.

映画『わが一機未帰還』に主題曲、挿入曲はなく音楽家のクレジットありません。

アチャーズ・プロ（The Archers）が製作した長編映画は19作品あり20世紀におけるイギリス映画の古典とみなされています。21世紀である現在、活躍している映画監督の中にもマイケル＆エメリック作品に影響を受けている人は多くフランシス・フォード・コッポラ（Francis Ford Coppola）やマーティン・スコセッシ（Martin Charles Scorsese）が影響されていることを認めています。

映画『黒水仙』の音楽を担当したのはブライアン・イースデイル（Brian Easdale）というイギリス・マンチェスター出身の作曲家です。マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー作品に多くの楽曲を提供しています。

映画『黒水仙』 original source 1947.

ブライアン・イースデイルは1948年のThe Archers作品である映画『赤い靴（The Red Shoes）』の音楽を担当しイギリス人で初となるアカデミー作曲賞受賞者になりました。

映画『赤い靴』original source 1948.

映画『戦艦ショペー号の最後（The Battle of the River plate）』1956.

映画『戦艦ショペー号の最後（ The Battle of the River plate）』もThe Archers製作、音楽担当ブライアン・イースデイルによる作品になります。

映画『黒水仙』の主演はデボラ・カー（Deborah Karr）ほかフローラ・ロブソン（Flora Robson）、ジーン・シモンズ（Jean Simmons）が出演しています。インドのヒマラヤ山麓にある女子修道院を舞台としたルーマー・ゴッデン（Margaret Rumer Godden）の小説を映画化した作品です。デボラ・カーはスコットランド出身の女優で前述のとおり、この『黒水仙』の出演がきっかけとなりハリウッドへの道が開かれました。1953年の映画『地上より永遠に（From Here to Eternity：ここよりとわに）』では相手役男優であるパート・ランカスター（Burt Lancaster）との波打ち際でのラブシーンが話題になりました。

映画『地上より永遠に』original source　1953.

映画『地上より永久に』original source 1953.

1956年の映画『王様と私（The King of I）』ではユル・ブリンナー（Yul Brynner）と共演し、映画音楽として有名な名曲Shall We Dance？が使用されます。この曲は1951年に初演された同名ミュージカルのために作られた楽曲です。

映画『王様と私』より Shall We Dance？ 1956.

映画『王様と私』のキャスティングは舞台と同じくユル・ブリンナーとガートルード・ローレンス（Gertrude Lawrence）を予定していましたがガートルード・ローレンスが舞台途中で亡くなってしまった事から急遽、ユル・ブリンナーの推薦によりデボラ・カーに変更されました。名曲１Shall We Dance？はもともとガートルード・ローレンスにあわせて曲が作られており映画『王様と私』でのデボラ・カーの歌唱パートはマーニ・ニクソン（Marni Nixon）が秘密裏に吹き替えています。この吹き替えの秘密を暴露したのはデボラ・カーでした。映画がサイレントからトーキーへ移行し、それまで俳優、とくに女優には求まられていなかった音声が重要視される時代における出来事です。

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